地域づくり団体の組織文化と教育研究

地域づくり団体の組織文化と教育研究

日本学術振興会科学研究費助成事業(科研番号22K02212) 現地説明資料

地域づくり団体の組織文化と教育・学習活動の相互影響関係と事業継承メカニズムの解明

1.概要

本研究は、地域づくり団体の組織文化と教育・学習活動の相互影響関係を分析し、事業継承のメカニズムを明らかにするとともに、継承支援方法を検討することが目的である。
地方創生政策下の我が国では、現在、地域づくり団体における担い手人材育成と事業継承が喫緊の課題となっている。地域づくり団体は、その属する地域社会の政治・経済・生活・文化・伝統等の影響を受けながら、独自の組織文化を形成している。それは地域づくり事業を継承するための教育・学習活動と密接な相互影響関係を有しているものである。
本研究では、地域づくり団体の継承活動を対象に、①組織文化の可視化、②教育・学習観や教育・学習動機の可視化、③組織文化と教育・学習の相互影響関係及び事業継承メカニズムの解明、④得られた知見モデルを用いた継承支援方法を試行実践し検証するものである。

2.研究の目的、および研究課題の学術的「問い」

本研究では、地域づくり団体の組織文化と教育・学習の相互影響関係を分析することで、事業継承のメカニズムを明らかにし、継承支援方法を検討する。
①地域づくり団体の組織文化は、どのような特質をもっているのか。
②地域づくり団体の組織文化と教育・学習は、どのような相互影響関係にあるのか。
③地域づくり団体の組織文化と教育・学習は、活動継承の促進要因あるいは阻害要因として、いかなる
働きをしているのか。

3.研究計画・方法

 全国7程度の農山漁村・都市近郊地域の地域づくり団体と連携・協働しながら、4年間にわたり以下の調査研究に取り組む。

【1年目】組織文化特性の可視化
組織文化の測定尺度である、R.E.Quinnらによる①競合価値フレームワークと、Cooke andRousseaunによる②組織文化インベントリ―に基づいたインタビュー、ヒヤリング及びアンケート調査を設計・実施し、当該地域の地域づくり団体の組織文化特性を可視化する。
①競合価値フレームワーク(4つの類型概念よりその特性を可視化)
a.クラン(凝集性やモラール、人的資源の開発・育成重視)
b.アドホクラシー(創造性や成長を重視)
c.マーケット(市場占有率や目標達成、競合事業者に対する勝利を重視)
d.ヒエラルキー(効率性、説明責任、安定性を重視)
②組織文化インベントリー(12の思考スタイルに類型し、その特性を可視化)
a.人間的・援助的 b.関係的 c.承認的 d.保守的 e.依存的 f.回避的g.反抗的 h.強制的 i.競争的
j.能力/完全主義 k.達成 l.自己実現

【2年目】教育・学習観、教育・学習動機の可視化
活動継承における、被継承者の①学習観と②学習動機の特性を、インタビュー及びアンケート調査により可視化する。分析に当たっては市川伸一らによる認知カウンセリングの観点から開発された測定尺度を参考活用する。また、対応する継承者の教育(学習支援)観や教育(学習支援)動機の特性について、インタビュー及びアンケート調査によって可視化する。
①学習観(学習の仕方への考え方の特性)及び教育観の可視化
4尺度により学習観及び対応する教育(学習支援)観の特性を可視化する。
a.失敗に対する柔軟性 b.思考過程の重視 c.方略思考 d.意味理解思考
②学習動機(学習を行う動機への考え方の特性)及び教育動機の可視化
6 尺度により学習動機及び対応する教育(学習支援)動機の特性を可視化する。
a.充実志向 b.訓練志向 c.実用志向 d.関係志向 e.自尊志向 f.報酬志向

【3年目】組織文化と教育・学習の相互影響関係と事業継承メカニズムの分析
可視化された組織文化特性と教育・学習特性をクロスレベル分析することで、地域づくり団体の組織文化と教育・学習の相互影響関係と事業継承メカニズムを明らかにする。分析に当たっては継承者、被継承者のフォーカスグループによるヒヤリングを行い、質的データを補完する。

【4年目】継承支援策の検討と支援プログラムの試行と検証
本研究で明らかにされた事業継承メカニズムの理論モデルを用いて、地域づくり団体の継承支援方法を検討する。検討に当たっては調査対象団体の継承者・被継承者によるワークショップを行いながら、支援方策とプログラムを作成するとともに、対象団体の協力を得て試行実践し、理論モデルの妥当性を検証する。

図表:4年間の研究の流れ