研究・教育・実践

研究プロジェクト概要

研究概要

「地方創生」において地域社会の担い手の必要性が叫ばれる中、地域の人材育成の方策や方法に関する提言や研究が活発にされています。こうした中で、個別の地域実践において担い手人材の育成方法や受入方策を構築していく上で、地域の担い手と目される人材(以下「地域担い手人材」と呼ぶ)がいかにして地域に目を向けるのかといった動機や意欲の形成過程について解明していくことが求められています。
本研究では、地域担い手人材が地域に関心を向ける動機や意欲を「『地域回帰』志向」と呼び、この形成過程と要因を教育学的観点から類型的・数値的に明らかにするとともに、人材育成プログラムを開発・実施し、その効果を検証していきます。

着想に至った経緯

研究代表者は、これまで農山漁村の地域づくりにおける教育・人材育成活動に着目して、各地でフィールドワークを行いながら主に社会教育・生涯学習の領域で研究活動を続けてきました。
平成28年度、地域づくり・学習活動団体の人材(担い手)育成と事業継承に関する研究を実施。その中で、担い手と目される地元若者、Uターン者、Iターン者のそれぞれにおいて動機や意識・意欲が大きく異なることが分かってきました。そのため同一の活動や事業内においてさえも一律の人材育成方法ではよい効果が生み出せないことが垣間見られます。
このため主に一定の地域社会全体の特性に考察の焦点を当てる従来の社会教育・生涯学習の方法論だけでは限界があることを示唆しています。より個別の人材の背景に着目してその「見える化」を図る必要性が現場で求められていると考えられます。

研究目標

本研究では、地域づくりにかかわる担い手人材を対象にして以下の3点を解明していきます。
1.地域づくり活動に参画する地元若者、Uターン者、Iターン者の「地域回帰」志向の形成過程と教育的要因を明らかにし類型化します。
2.類型を構成する教育的要因の影響度合いをその共通度や強さに応じて数値化することを試みます。
3.得られたデータや知見を利用して、「地域回帰」志向を向上させる人材育成カリキュラムを開発し試行実施して効果検証を行い、その有意性を明らかにしていきます。

研究計画・方法

地域特性の異なる国内6地域を調査地として設定します。本研究につながる予備調査等含め研究蓄積がある各地域の地域づくり・学習活動団体を対象にして以下5つの調査を実施していきます。

1.活動団体へのヒアリングと地域担い手人材に対するアンケート調査
2.地域担い手人材に対する個別インタビュー調査
3.複数の担い手人材を交えたグループヒアリングの実施
4.「地域回帰」志向の形成過程と教育的要因の類型化・数値化
5.上記の調査結果を踏まえて開発した人材育成プログラムの試行実施

調査の実施に当たっては、各段階の現地調査前に若者人材としての有志学生の協力による試行を行い調査精度の向上を図っていきます。

研究体制

国内6地域を中心に、関連性の高いその他地域とのネットワークを視野に入れながら、現地活動者の皆さんと共に調査と試行実践を行いながら研究を遂行していきます。